今年最高の映画『響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』は、なぜ劇場版でなければならなかったのか

短く解説します。ネタバレしかないので未見の人は読まないでください。

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佐藤浩市は安倍首相を揶揄したのか? インタビュー全文を読んだ私が解説します

最近ツイッターのタイムラインをにぎわせているのが、俳優の佐藤浩市が安倍首相の持病を揶揄する発言を行ったというもの。

なんと切り取りによる誤解ではなく、全文を読んでも「安倍さん揶揄」「難病患者を傷つける」ものらしい。安倍さんは権力者なので、単に権力者に対する批判を行っただけなら「炎上」するようなことでは全くありませんが、それが病気を揶揄するようなものになっていたら良くないですよね。

さて、というわけで、400円払ってビッグコミックを買ってきました。

ビッグコミック 2019年 5/25 号 [雑誌]

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問題のインタビューは表紙からページをめくってすぐのところにあります。インタビューページは1ページしかなく、上半分は佐藤浩市の顔写真と漫画のコマ等で占められているため、文章自体は半ページもありません。その中で佐藤浩市がどんな発言を行ったかについて取り上げていきます。

1."いわゆる体制側の立場を演じることに対する抵抗感"がある

これは芸能界あるあるですよね。例えば一般にはお笑いというのは「庶民の味方」であるべきとされたりしますし、芸能を含め表現者は普通に体制をそのまま肯定するような作品、極端なものだと戦時下におけるプロパガンダのような作品には協力すべきではないとされています。実は本文においてここも大事なポイントなので、ポイントAとします。

2.”この映画での少し優柔不断な、どこかクジ運の悪さみたいなものを感じながらも最終的にはこの国の形を考える総理、自分にとっても国にとっても民にとっても、何が正解なのかを彼の中で導き出せるような総理”

どういう役柄なのかについての説明。ポイントB。

3.”彼はストレスに弱く、すぐにお腹を下してしまうっていう設定”にした

問題とされる箇所ですが、まず第一に安倍などという名前は一言も出ていません。第二に、安倍さんを揶揄するのなら「お腹が痛くて総理を辞めた」ならまだ記憶力の良い人が安倍さんを思い出すかもしれませんが、単にストレスに弱くお腹を下してしまうというのは人間あるあるであり、緊張感を表現するものとして一般的な表現です。特定の難病でなくてもあることです。第三に、この設定はその前のページの作品紹介の中でも”総理という役職だけではなく一人の人間として国の未来と向き合う男の苦悩”(ポイントC)を見せるためとして出てくるほどの公式に認められたものであり、佐藤の独断、わがままでキャラが歪められたといった類のものではないということ(そういうキャラ変更の場合は、後から写真週刊誌等のスキャンダル欄の記事として取り上げられるものであって、作品の広告記事に使われるものではありませんよね)にも注意です。

4.インタビュアー”劇中では名実ともに「総理」になっていく過程が描かれる”

ポイントD。

5.”日本は常に「戦後」でなければいけない”

当たり前ですよね。違憲の疑いがあると言われながらも「平和安全法制」を成立させた安倍さんを含め、日本を戦前にしたい、戦中にしたいなんてほとんどの政治家は思っていないはずですし(全員と言いたいところなのですが、最近、ある国会議員が開戦を煽るような発言をして話題になっているため、全員と断言できないのがつらいところ)、日本を戦前、戦中にすべきだなんて主張は平和を守る政治家としては論外ですから。なんだか、一部にはここを問題視する人もいるようなのですが、これは当たり前の発言であり全く問題はありません。

さて、インタビュー全文を分析してきて、佐藤が自身の役柄を安倍さんに結びつけて揶揄しているのか、改めて振り返って考えてみると、安倍などという名前は出てこないし、安倍さんの病気とも関係ないことがわかりました。それでも、それでも安倍さんを揶揄しているだろうとお考えの方は、佐藤が演じる首相の設定について見返してみるべきです。

この映画における佐藤の役柄は、

”この映画での少し優柔不断な、どこかクジ運の悪さみたいなものを感じながらも最終的にはこの国の形を考える総理、自分にとっても国にとっても民にとっても、何が正解なのかを彼の中で導き出せるような総理”ポイントB

”総理という役職だけではなく一人の人間として国の未来と向き合う男”ポイントC

名実ともに「総理」になっていく過程が描かれる”ポイントD

また、ビッグコミック表紙より”至上の決断力を持つ男”ポイントE

なんです。要するに、この人物は立派な総理(になっていく人物)として描かれているんですよ。

更に決定的なのは、"いわゆる体制側の立場を演じることに対する抵抗感"ポイントA

があると佐藤に公言されるような役柄であり、つまり、例えば総理の役であっても、それが体制側をなじるようなもの、つまり愚かな総理を描くのなら抵抗感もないはずなのに、佐藤が”演じることに対する抵抗感”を持つような役柄なのですから、この総理は良い総理として描かれているんですよね。間違いなく。

そんなABCDEを持つ立派な総理と安倍さんをもし結び付けたとして、安倍さんへの揶揄になりますか?揶揄するのなら、対象を貶めないと意味がないわけで、立派な人物を「お腹痛くなる」から安倍さんだと結び付けたらそれはむしろ安倍さんへの崇拝を扇動していることになりますよね。この映画の描き方では全く揶揄として成り立たないんですよ。

よって、佐藤浩市は安倍首相を揶揄なんかしていません。全くしてないんです。

また、もっと一般に「原作から設定を改変するのはおかしい」という文句は当然あると思いますが、これは、ここからは私個人の見方なのですが、ある媒体で発表されたものを別の媒体にメディアミックス展開する時って、必ず「原作通りにはならない」んですよ。だって、小説、漫画、アニメ、実写、ボイスドラマ、演劇、ゲーム……それらって表現方法が違うわけじゃないですか。例えば小説、漫画は読者が自分でページをめくるという特徴があり、制作側の考える時間配分通りに流れていくアニメ、ドラマ、映画とは違うのですから、全く同じ作品にはなりようがないんですね。そして、恐らくいわゆる原作ファンが「原作通り」だと納得して喜ぶような作品というのは、実は原作への忠実度が高いのではなく、原作の良さを上手く引き出せているかで判断されるようなものだと思うんです。今回の設定のアレンジも、もしかしたら原作の良さを失わせるものであったり、つまらない映画にしてしまう変更かもしれませんから、そういう考えからの批判は成立すると思っています。ただ、それはこの佐藤のインタビューへの批判とは違うし、実際には原作をうまく映画に落とし込んだ良い作品になっているかもしれないし、それは原作ファンが映画を見て抱く感想だと思っています。

『劇場版 響け! ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』感想:少なくともこの数年のアニメ映画で最高傑作。今すぐ劇場に見に行くべき(ただし1期、2期、リズと青い鳥を見てから)

上映後、カウンターにて

 

私「ユー#&€@☆ムのパンフレット一つください」(普段人と喋らないからうまく発音できなかった)



誓いのフィナーレの何が最高って、どこまでもユーフォニアムなことですよ!

 

まず、開始5分でもうね、このアニメは誰のためのアニメか、高らかに宣言するんです。もう最高ですよね。100%こういう映画が、アニメが、作品が好きな人向けであって、××な観客は相手にしてないんです。

 

それから!あらゆる意味で最高なシーンで埋め尽くされてるんです!

 

跳ねるデカリボン先輩最高!!!

 

ヤバい後輩最高!!!ヤバい後輩と向き合う久美子最高!!!

 

美玲ちゃん綺麗!最高!!!

 

夏紀先輩が最高なのはよく知ってます!最高!!!

 

麗奈のキャラが変化したことによる安定感が手の挙げ方に現れていて最高!!!

 

サファイア島一生ついていきます!!!最高!!!

 

数秒前のあのシーンとは打って変わって部長を演じてるデカリボン先輩最高!!!!!!!!!

 

ユーフォニアムッッッ!!!!!!!!!!!!!あらゆる場面からユーフォニアムを感じる!!!!!!最高!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

かべちゃん先輩、わかるよ。あなたがいてくれてよかった。メタ的には、あおいちゃんがいない代わりにあなたがいるんだよね。いてくれてよかった。ありがとう。

 

 

 

 

 

 

久美子垢抜けすぎだろ!!!!!!!おい!!!!!!!!!! おい!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

いやあね、最後、あのヤバい後輩(久石奏と言うらしい。そんな良い名前なのかよクソッ)にあのセリフを言わせるところは、さすがにちょっとやりすぎな、リズと青い鳥的なものを感じなくもないけれど*1、まあやりすぎてるシーンはそこだけなので許します。この数年のアニメ映画では最高傑作でしょう。1期、2期、リズと青い鳥を見てまだこの映画を見に行っていない人は今すぐ劇場に見に行ってください。最高傑作です。

 

あと、この作品をこの時間で描いたのはもったいなかった、テレビアニメでちゃんと描写してほしかったという意見が(私が見に行く前にタイムラインで)散見されて、それについては私は、この映画は劇場版で良かったという立場をとりたいと思います。詳細について聞きたい人はDMください。ブログやツイートで書くには、ネタバレを避けられないし、私はこの作品は絶対に1期、2期、リズと青い鳥を見た人にそのまま素で見てほしいと思っているので。

 

とにかくこの数年のアニメ映画では最高傑作なので、1期2期リズと青い鳥を見に行った人は、今すぐ劇場に行ってください。

*1:筆のノリでこんなことを書いてしまったけれど、あのシーン、それまで多用していた演出手法は使用していないんですよね。だからギリギリやりすぎを抑えたやりすぎではあると思います。

東日本大震災被災者アンケートの設問「東京五輪は復興の後押しになる?」におけるNHKの工夫が微笑ましい

NHKは毎年、東日本大震災の被災者にアンケートをとり、実感として復興は進んでいるか、家計の状態はどうかなどを質問しているようです。

東日本大震災5年 被災者1000人アンケート

東日本大震災6年 被災者アンケート

そんな中で、2020年の東京オリンピックが近づいてきました。東京オリンピックは招致活動当初から復興五輪を名乗っており、被災者とは関係のない土建屋が災害に関係ない事業で儲けることと災害からの復興に何のつながりがあるんだと一部で疑問を呈されながらも、少しは東北でも競技しますとか聖火リレーは福島からやりますとかそんな上辺だけの関連付けによって未だに復興五輪ということになっています

NHKは震災から7年のアンケート「東日本大震災 あの日から7年」で、「2020年の東京オリンピックパラリンピックは、被災地の復興の後押しになると思いますか?」という設問を設けました。非常に素朴な質問ですが、その結果がこちら。

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「そう思わない」が8割超え!すごい数字ですね。あまりにもすごい数字なので、NHKは結果概要でこの設問に触れることができず、結果を並べたPDFファイルにのみ残ることになりました。

それから1年。この設問自体をなかったことにしてしまう方法もあったかもしれませんが、NHKは再び取り上げます。偉いですね。「東日本大震災8年 被災者アンケート」を見てみましょう。

2020年に開催される東京オリンピックパラリンピックについて聞いたところ、開催を楽しみにしているという回答が約40%あった一方で、復興の後押しになるとは思わないという回答は約60%にのぼりました。

んんんっ?前年は8割が復興を後押ししないと回答していたのに、今年は6割ですか。6割だと、後押し否定派が少し多いんだなという程度で、あんまり圧倒的という感じのしない数字ですね。復興のためになると思う人も増えてきたのかもしれません。

果たして、本当にそうでしょうか?詳しく結果を見てみましょう。

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後押しする:14.3%

どちらでもない:15.9%

そう思わない:57.6%

 

選択肢に「どちらでもない」を加え、更に無回答の12.2%をそのままにして割合を出した結果の57.6%でした……。いやいや、「どちらでもない」って、それ復興の後押しになると思うかどうかの選択肢として入れていいんですか?しかも無回答をそのまま放置していいの?無回答の割合は外してカウントしないとダメでしょ。例えば内閣支持率調査って回答率5割とか6割くらいだけれど5割を無回答として「内閣支持率は2割でした。不支持3割無回答5割」なんて言わないですよね。

改めて、無回答を結果の対象から外して、「どちらでもない」は「後押しするわけではない」のだから「後押ししない」にカウントして計算してみると、

後押しする:約16.3%

後押ししない:約83.7%

ほら。8割が否定派ってなっちゃうじゃないですか。つまり、NHKはアンケートの選択肢を変え、結果の出し方を変えることで、概要欄に記述できる程度の結果に収めたわけですね。

 

あっ、ちなみに「どちらでもない」は「どちらでもない」であって後押ししないわけじゃないだろう、という鋭い方のために、無回答部分のみを補正した「そう思わない」の数値も載せておきます。

57.6/87.8*100=約65.6 65.6%

無回答部分をそのまま放置していると「57.6%」で、これなら

約60%

と書けるのですが、無回答をちゃんと省いてまともに計算してしまうと約60%や約6割とは言えずに、65%とか約7割になってしまうんです。だから無回答をそのまま放置して結果にしたんでしょうね。6割だとギリギリニュースにできるNHKニュースは1週間でリンク切れになってしまうためはてなブックマークで代用)ラインということなのでしょう。NHKによる必死の工夫が見られて大変面白かったです。

 

 

世論調査とは何だろうか (岩波新書)

世論調査とは何だろうか (岩波新書)

 

 

ゲームアプリ『テクテクテクテク』レビュー

この記事はもっと前に書くつもりだったのだが、あまり話が広がらないなと思ったので止めてしまっていた。
たまたま高須克弥とコラボしてテレビCMが流れていることを知ったので(CM自体は見ていない)、ナチスを賛美しアウシュビッツを捏造だと語る高須克弥に全く同意せず嫌悪していることを示すために、今更ながらアンインストールした(ゲーム自体は1か月以上起動していなかったので不都合はなかった)。ついでにこのアプリについて書いておこうと思う。

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まんがタイムきらら展に行ってきました。

僕の感じた感情の9割は個人的などす黒いものなので、それを抜きにした残り1割で私はきらら展に行きましたという生存報告にしたいと思います。

今日、祝日なんですね。金曜日だから土日よりいいだろうと思って時間作って行ったんですが、混んでいました。しかし混雑の中の会話で「前に来たら3時間待ちと言われたので止めて今日にした」と言っている人もいたので、見られる瞬間に来られただけ幸運だったのかもしれません。

雑誌ごとに過去作、現在連載中の作品合わせて80作品の新規イラスト、展示に合わせた4コマが並んでいて、楽しめました。『まんがタイム』が「笑い」の雑誌なので、そこに「萌え」をプラスしたのが一連のきらら作品群だという考え方を受け、なるほどなと思いました。もちろんきらら漫画も百発百中ではありませんが、原理的にキャラがかわいいだけのつまらない漫画が比較的出にくいという面はあるのかなと思います(私があまり好みでない漫画も、無でつまらないというよりは笑いのテンションが合わないということが多いので)。

もちろん僕の中での二大名作漫画もあり、それはとても嬉しかったのですが、過去作で好きなある作品の展示がなかったので(書店では見かけるので別に発禁にされたわけではないのですが、作品自体は明らかに打ち切り的な終わり方をしていた)そこはかなり残念でした。80作品の中には数年で連載終了したものも含まれているので、その中に含まれなかったほどなのかな、と。

また、私の知らない作品が沢山あったのですが、似たようなアイデアを使い回していることがあり(幽霊が棲み着いたとか)なるほどなと感じました。

創刊当初の表紙群は明らかにいわゆる2000年頃のエロゲー的萌え絵で構成されており、うめ先生の絵柄も当時はそこから外れない程度の方向性だったんだなということに改めて気づかされました。現在のきらら作品群の絵柄は『うらら迷路帖』に代表されるようなものに完全にシフトチェンジしており、その時代の流れも面白かったです。

客層は99%が僕のような気持ち悪い人間でした。ほんの2人ほど?中学生くらいの女の子が母親と一緒に来ていて、こういう人達は漫画家の先輩の絵を見に来ているんだなと、僕達が何も生み出さない一方でこの人達がこれから素晴らしい世界を描いていくんだなと痛感しました。

さて、この展示ではグッズ売り場がセットになっており、その日の展示を見た人だけが(入場料1500円)グッズ売り場で買い物ができる仕組みになっています。私は特にグッズなんかには興味がないというフリをしつつ、実はひだまりスケッチのマグカップを買うつもりでいたのです。いつ使うんですか?使う機会ないですよね?本当にバカな人だなと思います。そして、グッズ売り場前のボードを見ると、なんと、ひだまりスケッチのマグカップは売り切れと出ているのです。はぁ……。まあ、仕方ないですよね。しかし、後日入荷予定とも書かれているのです。つまり、また展示を見に来たら買えるかもね!また1500円払って来てね!と言っているのです。いやあ、さすがですよね。もちろん明日明後日は行きません。まあ、ひだまりスケッチのマグカップを買っても使えないし、別に買わなくていいですよね。そんなこんなで報告を終わります。後一つ。川井マコト先生のドローイング映像には感動しました。あんなに手をかけているとは想像できませんでした。また全巻読み直して、絵の細やかさにも着目してみたいと思います。音声ガイドは……声優オタクの人は喜ぶんじゃないかな?私的にはこの前行った美術館の音声ガイドが素晴らしかったので、ね……。あと、音声ガイドの「先生はおっしゃっている」というフレーズが、『プラネットウィズ』とかいうアニメ(全然関係ない)のフレーズで再生されて気になって仕方なかったです(どうでもいい)。

なんで前売り券買わなかったのかというと、そこまで気が回らなかったんです。でも展示は見に行きましたからね。これからのきらら漫画も色々読んでいきたいと思います。終わり。

映画『search/サーチ』感想 ふたつの疑問とテンプレート

(原題:Searching)

私のタイムライン上では絶賛されている映画『サーチ』を見てきた。私の感想としては、事件解決の部分の伏線はしっかりしているものの、それ以前のこの映画の基礎部分にある構造があまりにもテンプレートである上にそのテンプレが自分好みではないということ、パソコンディスプレイ上の描写には気を遣っているわりにおかしいところがあるという点で、まずまずの映画だという結論に至った。この感想では主に描写の疑問点を挙げ、最後にこの映画で利用されているテンプレートについて触れたいと思う。

以下の感想はネタバレを含みます。未見の方は読まないでください。

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