映画『君の名は。』感想(未見の方はクリックしないでください)

客層が若かった。ウキウキなオタク団体が何組かいた。僕はもちろん独りで見ました。

これから必ず見るつもりで未見の方はこの先を読まないでください。

 

 

 

 

魔法少女まどか☆マギカ』×『秒速5センチメートル』×「2ちゃんねるニュー速vip)創作SSスレッド」に、『シュタインズ・ゲート』とRADWIMPSのスパイスをかけたような作品。先にRADについて述べておくと、RADが嫌いかどうかというより『秒速』と同じようなミュージックビデオ風の使い方と、あと汚い声が邪魔なだけで、RADだからどうというほどには気にならなかった。

 

本題に入る。最初10分の地方描写がかなり良い。このアニメは地方創生アニメでもなんでもないわけで、地方の地方らしいところを痛烈に描写している。ただその一方でこの映画一番の売りである風景は非常に非常に非常に綺麗で、このために映画館に来たと言ってもいい。生い茂る草木、雑草が美しい。

 

 奥寺と三葉の百合が良い。この映画は「女子力」という言葉が出てきたり「口噛み酒を売って儲ける」といった発想が出てくるあたり極めて2ちゃんねる的な、性差別的な価値観のもとにある映画なのだが、奥寺からすると瀧ではなく瀧の中の人が三葉になっている間が魅力的に映るという要素は救いだった。進展はしないけど。

というか奥寺も瀧の友人もいい人すぎるだろ、あんなのに付き合って田舎に行かないよ。「青春」を感じてすごく嫌な気分になったよ僕は。

 

RADのPVは気持ち悪いので置いておいて、その後からは彗星から皆を救えるかという映画になる。ここは面白かった。面白かったのだが、ラストに向けて面白くなくなってきて、最終的に新聞記事一枚でなぜか助かったことにされるのが意味不明だった。三葉が父親を説得できる要素は全く何もない。何か父親に変化があったり、三葉に変化があったなら伏線になるのだが、そんなものはない。どうやって父親を説得し、避難させたのかは全くの謎だ。つまり「彗星から皆を救えるか」という部分で盛り上がったのは肩透かしで、適当に誤魔化したということになる。がっかりした。

 

ラストは上辺だけ『シュタゲ』みたいな、なんだかハッピーエンドっぽい何かで終わったんだけど、これで皆さん感動しますか?「救われた」とか書いてる人が大量にいたけれど、本当にそうですか?僕は奥寺先輩が指輪輝かしてるのを見てはぁ〜って感じでしたよ。『君の名は。』というタイトルの意味は、名前を忘れても君のことは忘れない、という意味を持っているのだけれど、その運命性を全く感じられなかった。例えば、彗星が空襲や地震の代わりに使われているのだとしたらなぜか住民のほとんどが救われているあたりが合わないし、彗星から皆を救った二人としての意味を持たせたいのなら救った瞬間を新聞記事一枚で済ませてはいけない。全く納得がいかないですよこれ。彗星から皆を救うんだと動き出した瞬間には涙が流れたのに、エンディングではすっかり乾いていました。

 

途中途中婆さんの話は説教臭いと感じる人がいるかもしれないけど、僕はそこはわりとよかった。糸守町に没入できていた。あの風景をもう一度見に行きたい。もう一度見たいと思える。でも話としてはがっかりですよ。『秒速』では寝取られたけれど、こっちでは出逢えたから救われた?なんだその表面的な理解は。お前を探している美少女なんかいないんだぞ、満員電車で突然瀧くんなどと話しかけてこないぞ、目を覚ませ。だいたい女にひたすら求め続けられるという2ちゃんねる的な妄想を描いてるのが気持ち悪い。いや、キモい。髪留めというアイテムはまどマギの完全なパクリだし。なんなのこれ。糸守町をどうにかして救う瞬間を描いていたら、この映画の評価は一つ上がりましたよ。だけれど、三葉が父親を説得する術がない。それに繋がる何かを描いていないから。だから、糸守町を救う瞬間は描けない、新聞記事一枚で誤魔化すしかない。これじゃ泣けないですよ。伏線がないのなら、父親を殴りつけてネクタイ引き千切って、必死な三葉を描いてほしかった。それがないのに感動しろったって無理です。

 

製作に川村元気の名前があって、川村元気は『世界から猫が消えたなら』とかいう作品(もちろん僕は読んでいない)を大ヒットさせたベストセラー作家と同姓同名だなと思っていたんだけれど、今調べたところによると同一人物で、さらに川村元気は『電車男』のプロデュースもやっていたと。はぁ。つまり、つまり『君の名は。』は、2ちゃんねる映画ですよ。2ちゃんねる的な価値観のもとにある映画なのは、製作がそういう人間だから。この映画がこんなにくだらない理由、なぜか大ヒットしている理由、みんなが感動している理由、すべて説明がつきましたね。

 

風景を見に行く映画としてはありだと思います。それ以外の目的では薦められません。