NHKは毎年、東日本大震災の被災者にアンケートをとり、実感として復興は進んでいるか、家計の状態はどうかなどを質問しているようです。
そんな中で、2020年の東京オリンピックが近づいてきました。東京オリンピックは招致活動当初から復興五輪を名乗っており、被災者とは関係のない土建屋が災害に関係ない事業で儲けることと災害からの復興に何のつながりがあるんだと一部で疑問を呈されながらも、少しは東北でも競技しますとか聖火リレーは福島からやりますとかそんな上辺だけの関連付けによって未だに復興五輪ということになっています。
NHKは震災から7年のアンケート「東日本大震災 あの日から7年」で、「2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、被災地の復興の後押しになると思いますか?」という設問を設けました。非常に素朴な質問ですが、その結果がこちら。
「そう思わない」が8割超え!すごい数字ですね。あまりにもすごい数字なので、NHKは結果概要でこの設問に触れることができず、結果を並べたPDFファイルにのみ残ることになりました。
それから1年。この設問自体をなかったことにしてしまう方法もあったかもしれませんが、NHKは再び取り上げます。偉いですね。「東日本大震災8年 被災者アンケート」を見てみましょう。
2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックについて聞いたところ、開催を楽しみにしているという回答が約40%あった一方で、復興の後押しになるとは思わないという回答は約60%にのぼりました。
んんんっ?前年は8割が復興を後押ししないと回答していたのに、今年は6割ですか。6割だと、後押し否定派が少し多いんだなという程度で、あんまり圧倒的という感じのしない数字ですね。復興のためになると思う人も増えてきたのかもしれません。
果たして、本当にそうでしょうか?詳しく結果を見てみましょう。
後押しする:14.3%
どちらでもない:15.9%
そう思わない:57.6%
選択肢に「どちらでもない」を加え、更に無回答の12.2%をそのままにして割合を出した結果の57.6%でした……。いやいや、「どちらでもない」って、それ復興の後押しになると思うかどうかの選択肢として入れていいんですか?しかも無回答をそのまま放置していいの?無回答の割合は外してカウントしないとダメでしょ。例えば内閣支持率調査って回答率5割とか6割くらいだけれど5割を無回答として「内閣支持率は2割でした。不支持3割無回答5割」なんて言わないですよね。
改めて、無回答を結果の対象から外して、「どちらでもない」は「後押しするわけではない」のだから「後押ししない」にカウントして計算してみると、
後押しする:約16.3%
後押ししない:約83.7%
ほら。8割が否定派ってなっちゃうじゃないですか。つまり、NHKはアンケートの選択肢を変え、結果の出し方を変えることで、概要欄に記述できる程度の結果に収めたわけですね。
あっ、ちなみに「どちらでもない」は「どちらでもない」であって後押ししないわけじゃないだろう、という鋭い方のために、無回答部分のみを補正した「そう思わない」の数値も載せておきます。
57.6/87.8*100=約65.6 65.6%
無回答部分をそのまま放置していると「57.6%」で、これなら
約60%
と書けるのですが、無回答をちゃんと省いてまともに計算してしまうと約60%や約6割とは言えずに、65%とか約7割になってしまうんです。だから無回答をそのまま放置して結果にしたんでしょうね。6割だとギリギリニュースにできる(NHKニュースは1週間でリンク切れになってしまうためはてなブックマークで代用)ラインということなのでしょう。NHKによる必死の工夫が見られて大変面白かったです。