Roselia『Wahl』：新曲3曲の短評／製作側の思惑とファンの目線

Avant-garde HISTORY
箸休め的な曲。しかし、アルバムとして考えるとここまでの5曲が濃厚すぎて、こういうどうでもいい曲が必要なタイミングと言えるだろう。箸休め的な曲が十分聴ける（クオリティがそこそこ保たれている）というのは他のアニソンバンドと比較してRoseliaの大きな特徴でもある。

Break your desire
本アルバムを代表するオリジナル曲で、前作でいう『Neo-Aspect』の位置にあたる。上松節全開でとにかく心地良い。
編曲は藤永龍太郎に任せているのだが、Roseliaの曲を聴いている限りこの藤永は信頼できる編曲家だと思う。詞はRoseliaのバンドとしての向上心を表現したものになっている（ゲーム内2次元ストーリー要素）。
ちなみに、ゲーム（ガルパ）内の「Break your desire」を聞くと、友希那の声がかなり不安定で大丈夫か？と思うのだが、リリース版では修正されているのでそこは安心していい。

Song I am.
前作のLOUDERに続き、アルバム最後の曲はしっかり骨太な轟音を響かせて終わっているのは好印象。ただし歌詞の最後が気になった。「LOUDER」とは前作最後の曲名じゃないか。これは明らかにわざと使われている。

以下閲覧注意。

『Wahl』を買わなかった理由

私はRoseliaの2ndアルバム『Wahl』を買わなかった。前作は初回盤CDを買っていたのだが今作は配信サイトで新曲だけを購入した。なぜかというと、『Wahl』の収録曲がおかしいからだ。

「Determination Symphony」「Re:birth day」「Neo-Aspect」の3曲は前作『Anfang』収録曲であり、なんで今作にも入っているのか謎である。一般に、ロックバンドやアイドルが前作収録曲を次のアルバムに入れることもあるにはあるが、それはその曲がヒットしていたり、新解釈を織り込んだ別バージョンだったりする時に起きる。 なので、例えば「Black Shout」1曲が新版と明記され収録されているとかなら、何の違和感もなかったし、意味を見出すことができただろう。「Determination Symphony」「Re:birth day」「Neo-Aspect」の3曲が選ばれた理由は私にはわからなかった。1枚のアルバムとして納得できなかった。（それなのにもかかわらず、Roseliaのファンはほとんど何も言わず、何も疑わずにこの収録曲を受け入れていて、正直気味が悪かった。）

では、Roseliaはなぜこのようなアルバム発売に至ったのだろう。これは、消費者の側からすると意味不明だが、製作者の側からすると必要なことだったのだ。

崩れ去った『Anfang』

Roseliaの1stアルバム（かつ、それまでのすべてを詰め込んだベストアルバム）であった『Anfang』は、2018年5月発売なのだが、この2018年5月というのは今井リサ役声優：遠藤ゆりかの引退時期と重なる。更にこの後、白金燐子役声優：明坂聡美を降板に追い込むことになり、『Anfang』のオリジナルメンバー5人のうち2人が代わった状態になってしまったことになる。 『Anfang』はリリース直後すぐに、（今の）Roseliaを代表するアルバムとして適格とは言えなくなってしまったのだ。『Wahl』にあえて前作アルバムの曲、しかも前作アルバムのリード曲である「Neo-Aspect」までも含めて発売した理由はここにある。ブシロードとしては、Roseliaのファーストアルバムを『Wahl』にしたいのだ。 たまたま「R」というRoseliaの名刺に相応しい曲も作られたからこれを新生Roseliaの1曲目にしよう、「Neo-Aspect」は陳腐化させようということなのだ。これは製作者側の狙いであった。

従属アルバムとしての『Wahl』

しかし、我々はそうは受け取らない。なぜなら我々は『Anfang』を擦り切れるほど聴いているわけで、製作者の要望通りに忘れられるわけではないからだ。 「Song I am.」の歌詞の末尾「LOUDER　LOUDER」が、製作者側からすると「あっちじゃなく、こちらが本当の1stアルバムですよ」という主張であるにもかかわらず、我々には「『Wahl』は『Anfang』のオマケですから。1stアルバムの延長戦ですから許してね」と受け取れてしまうのだ。少なくとも私はそう受け取った。

忘れられた3曲

ちなみに、『Anfang』でそうしたように、カップリング曲を全曲入れようとすれば『Wahl』にもあと3曲入れることができる（他にも「ガルパ」で既に出ている曲はある）。『Anfang』収録曲を使わずとも2ndアルバムを満たすことはできたのだ。（ただそうすると『Anfang』を普通の1stアルバムにしてしまうため、ブシロードはあえてそうしなかったのだろう。）この3曲は「Sanctuary」「Ringing Bloom」「PASSIONATE ANTHEM」であり、なぜかとんでもない名曲揃いなので、『Anfang』『Wahl』だけを聴いた人もぜひ触れてほしい。

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