憲法記念日における日本国首相の発言 2016~

ちょっと気になったので検索しました。著作権法上の引用とするために全文はリンク先をご覧ください。(太字装飾は私がつけています)

安倍首相(自民党総裁

2016

 「今の憲法が成立して70年近くがたちました。この間、経済や社会など国内外の情勢はものすごいスピードで変化し、世の中は大きく様変わりしましたが、憲法は一度も改正されていません。そのため、どのようなことが生じているか。一例を挙げますと、昨年、平和安全法制をめぐって憲法に関する議論が盛り上がりましたが、今の憲法には『自衛隊』という言葉はありません。昨年6月に朝日新聞が行った調査によれば、憲法学者の7割が『自衛隊違憲の可能性がある』としていますが、その一方で、自衛隊は創設されてすでに60年余りが経過し、昨年1月の世論調査によれば、国民の9割以上が自衛隊を信頼していることが分かります。こうした中で本当に、自衛隊違憲かもしれないと思われているままでよいのかということは、国民的な議論に値するものだと思います

https://www.sankei.com/politics/news/160503/plt1605030088-n1.html

2015年は検索した限りだと安倍晋三がビデオメッセージを改憲派集会で披露したという話はないので、2016年から話を始めます。まず、2016年から安倍晋三自衛隊違憲だなどと言い始めていることに驚き、呆れました。この時点では具体的に「書き込む」という言葉を使用していないためにさほど話題にならなかったのでしょうけれど、自衛隊が合憲だという日本政府の公式見解から外れ、自衛隊違憲説に時の首相が乗っかってしまっていることは、この時点で問題視されても良かったのではないかと思います。

2017

例えば、憲法9条です。今日、災害救助を含め、命懸けで24時間、365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く、その任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は9割を超えています。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊違憲とする議論が、今なお存在しています。「自衛隊違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任です。

私は少なくとも、私たちの世代のうちに、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、「自衛隊違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきである、と考えます。

もちろん、9条の平和主義の理念については、未来に向けて、しっかりと堅持していかなければなりません。そこで「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という考え方、これは国民的な議論に値するのだろうと思います。

https://www.nikkei.com/article/DGXLASFK03H16_T00C17A5000000/

2017年、ひろく話題になり問題となった明確な憲法違反発言。この発言のポイントは安倍が憲法違反を犯しながら喋った改憲の内容が、自民党の提案する改憲案ではなく伊藤哲夫の案であるということ。安倍晋三ふざけるな、自民党総裁という立場上仕方なく触れるという形式すら取れない改憲案では、どう考えても言い逃れのできない憲法違反だろ、擁護したくても擁護できないよ、という声が果たして自民党員から出てきたでしょうか。もしそのような声を上げていない自民党員の方がいらっしゃるのであれば、今からでも言ってもらいたいものです。

2018

しかし、残念ながら近年においても「自衛隊は合憲」と言い切る憲法学者は2割にとどまり、違憲論争が存在します。その結果、多くの教科書に合憲性に議論がある旨の記述があり、自衛官たちの子供たちもその教科書で勉強しなければなりません。皆さん、この状況のままでいいのでしょうか。

この状況に終止符を打つため、憲法に、わが国の独立と平和を守る自衛隊をしっかりと明記し、違憲論争に終止符を打たなければならない。それこそが今を生きる私たち政治家の、そして、自民党の責任です。敢然とその責任を果たし、新しい時代を切り開いていこうではありませんか。

 憲法の専門家において、自衛隊違憲論が存在する最大の原因は、憲法にわが国の防衛に関する規定が全く存在しないことにあります。わが国の安全を守るため、命を賭して任務を遂行している者の存在を明文化することによって、その正統性が明確化されることは明らかです。そのことはわが国の安全の根幹にかかわることであり、憲法改正の十分な理由になるものであると考えています。

https://www.sankei.com/politics/news/180503/plt1805030018-n2.html

違憲論争に終止符を打つのは、政府による合憲解釈とそれに至る議論の積み重ねです。その結果として政府は自衛隊は合憲だという立場をとっているのにもかかわらず、なぜか安倍晋三内閣総理大臣(当時)は自衛隊違憲である可能性を求め続けています。

2019

次は政治が役割を果たすときです。すべての自衛隊員が、強い誇りを持って任務を全うできる環境を整えるため、憲法にしっかりと「自衛隊」と明記し、違憲論争に終止符を打つ。私は先頭に立って、責任をしっかりと果たしていく決意です。

そして、教育の問題。この10月から幼児教育の無償化、そして、真に必要な子供たちの高等教育の無償化を実現いたします。子供たちこそ、この国の未来そのものです。世代を超えた「貧困の連鎖」を断ち切るため、家庭の経済事情にかかわらず、教育はすべての子供たちに真に開かれたものとしなければならない。私たちはこのことをしっかりと憲法に位置付けなければならないと考えます

https://www.sankei.com/politics/news/190503/plt1905030010-n1.html

自衛隊員の誇りを傷つけるのはあなたのような内閣総理大臣による自衛隊違憲論の持ち出しでしょう。毎年毎年、安倍晋三という日本の代表から自衛隊違憲論を垂れ流されて(この話は、自衛隊は合憲だという主張ではなく、自衛隊違憲の可能性があると主張するために持ち出されていることに注意)、自衛隊員も呆れているのではないでしょうか。また、急にこの年は教育無償化を憲法に位置付けるという主張が登場します。憲法26条じゃダメなの? 詳しい人の分析ではこの謎の改憲案提示の意味は色々あるのでしょうが、我々憲法の専門家ではない人のレベルからするとこの社説で十分でしょう。現行憲法に書かれているのだからそんな改憲は必要ないし、そもそも教育に金をかけることを自民党は拒んできた側なのに何を言っているんだという話です。

2020

他方で、きわめて残念だったことは隊員のご家族が見守る一角に「憲法違反」とのプラカードが掲げられていたことです。隊員の子供たちももしかしたらそれを目にしたかもしれない。どう思っただろうか。そう思うと言葉もありません。

 創設以来何十年にもわたり続く自衛隊違憲」というおかしな議論に終止符を打つためにも自衛隊の存在を憲法上明確に位置付けることが必要です。全国25万の自衛隊員諸官が強い誇りを持って任務を全うできるよう、憲法にしっかりと私たちの「自衛隊」を明記しようではありませんか。

https://iwj.co.jp/wj/open/archives/473790

どこの誰だかよくわからない人が掲げるプラカードよりも、日本国の首相により毎年違憲論を蒸し返されることの方が、ことの重大さとしては深刻だと思いますけれどね。 あと、ここまで見てきて安倍晋三が勘違いしていると思うことがあるのですが、憲法自衛隊が明記されたとしても、自衛隊員に文句を言う人は常に出てくるわけですよ。それは自衛隊員に限らず、どの職業に対しても職業アンチは登場するわけです。その文言が「憲法違反」ではなくなるかもしれない、程度の話なんですよね。そしてその場合、「憲法違反」の代わりにどのようなプラカードが掲げられるのでしょうか。あまりにも惨たらしいので触れませんが……。要するに安倍晋三自衛隊員の立場を考えて言っているのではなく、改憲のために自衛隊を利用しているだけなんですよ。この点からもよくわかります。内閣が自衛隊をちゃんと合憲だと認めていて、更に今現在9割の国民にも支持されているのなら、それでいいじゃないですか。9割支持って凄いですよ。

菅首相自民党総裁

2021

また自衛隊は大規模災害や新型コロナ等にも懸命に対応しており、国民の皆様の多くから感謝され、支持されています。それにもかかわらず、自衛隊違憲とする声があることもまた事実です。そこで自民党では、憲法審査会で活発な議論を行っていただくため、「自衛隊の明記」をはじめ、

https://www.youtube.com/watch?v=WNVQ3zU0YSw

菅義偉は安倍路線を踏襲しているので、自衛隊違憲の可能性があるという話も踏襲したわけですが、憲法を変えるための根拠が「大規模災害や新型コロナ等にも懸命に対応」しているからになっています(引用文中の「また」以前の部分は緊急事態云々の話であって、自衛隊についてではありません)。それだったら自衛隊の兵器全部捨てて、非武装の災害救助隊にでもして憲法に書き込みますか? 自衛隊違憲だとする人達は自衛隊が戦力だからダメだろと言っているんだから、「大規模災害や新型コロナ等にも懸命に対応」していることだけに触れながら「それにもかかわらず」ではおかしいでしょ。「それにもかかわらず」ではない、としか言いようがないのではないでしょうか。菅首相周りの人の仕事が雑なのではないかと思います。

このように、安倍晋三だけが暴走して自衛隊違憲説を唱えだしているのではなく、その次の自民党総裁内閣総理大臣である菅義偉まで自衛隊違憲説を語るようになってしまいました。 普通に考えればわかりますが、自衛隊が合憲であるという政府見解と、自衛隊違憲だから憲法を変えなければならないとする改憲案は真っ向から対立しているので、首相の立場でこのような言及の仕方はあり得ないわけです。「これだけ支持のある自衛隊なのに違憲だと言われて可哀想」というお涙頂戴路線(つまり、これは憲法論議ではない)のためだけに、このようなバカげた言及が繰り返されているんですね。安倍晋三だけでなく菅義偉も同じことを言い始めたため、自由民主党が救いようのないダメ政党であることを改めて確信せざるを得ないなと私は感じました。

憲法 第七版

憲法 第七版