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共同通信によるコメント捏造の件から、報道について考える

映像屋のざれごと: 共同通信社さん配信の報道に関して。

翌日、友達から連絡が、「新聞にこんなののってる!」と東京新聞さんの記事を写真で送ってくれました。

「太陽光は原則こうした影はできない」

と、僕がコメントを出したようにしか読めない文章でした。
正直、「??????」んなこと言ってないじゃん?できるって言ったじゃん?

イスラム国による例の映像の真偽についてコメントを求められた映像屋さんが、答えたコメントをねじ曲げられた事件である。もちろん、これは問題であり、たとえば朝日新聞産経新聞が都合良くニュースをねじ曲げるというのはよくあることだが、一般に時事通信共同通信といった通信社というのは単に事実を配信する機関だと私は無知ゆえに考えていたので、少し驚いてしまった。しかも、解釈の間違いではなく、政府発表に合わせる形で改竄するというのは最低最悪である。

しかし、この件についてニュース記事を検索して読んでみたところ、違う観点から考えさせられるところがあったのだ。あくまでネット上で、無料で見られる社の記事についてのみの調査なのでそこは各自割り引いて見てもらいたい。

 

 

映像屋さんの名前でこの件についてのニュース記事を検索してみたところ、共同通信自身の記事は見つからず、他社のもので3件引っかかる。

 

邦人殺害警告 タイムリミット23日昼頃か - 国際ニュース : nikkansports.com

日刊スポーツは

 映画編集者の田巻源太さんは「太陽光では原則こうした影はできない」と指摘したものの、室内で複数の照明を使い撮影し、背景を合成したとすればありうるという。

 と書き、全体としては合成であるということよりも2人が被害に遭っていることに重きを置いた内容である。

 

警告映像は加工、合成の疑い 男性2人の影「不自然」 ― スポニチ Sponichi Annex 社会

スポーツニッポン

映画編集者の田巻源太さん(33)は「太陽光では原則こうした影はできない」と指摘する。ただ、室内で複数の照明を使い撮影し、背景を合成したとすればありうる映像だといい、「2人を別々に撮影したとまでは断定できない」とみる。 

 と書き、合成の可能性が強いことを中心とした内容になっている。

 

日本人2人殺害を警告 「イスラム国」ビデオ声明、身代金2億ドル要求:一面:中日新聞(CHUNICHI Web)

中日新聞

映画編集者の田巻源太さん(33)は「太陽光では原則こうした影はできない」と指摘する。ただ、室内で複数の照明を使い撮影し、背景を合成したとすればありうる映像だといい、「二人を別々に撮影したとまでは断定できない」とみる。

 と書き、記事前半では今回の事件についての概要を、後半で映像の加工について強調した内容になっている。

 

 

読んでみるとわかるが、中日新聞の記事後半と、スポーツニッポンの記事は完全に同じものだ。言っていることが同じなのではなく、文章が全く同じなのだ。

中日新聞の副題は『映像は合成の疑い「影が不自然」』、スポーツニッポンの記事タイトルは『警告映像は加工、合成の疑い 男性2人の影「不自然」』であり、これについて検索すると共同通信の以下の記事が引っかかる。

公表した映像は加工、合成の疑い 男性2人の影「不自然」 - 47NEWS(よんななニュース)

記事タイトルが共同通信の配信タイトルからとられたことは想像に難くない。さらに、この共同通信の記事を〔共同〕と、共同通信による配信であることを明記して日本経済新聞が書いている。

邦人殺害警告映像は合成、加工の疑い 影が「不自然」 :日本経済新聞

記事タイトルは違うが、全く同じ内容だ。

しかし日経が同じように”共同通信による配信であることを明記して”書いたこの記事についてはどうだろう。

映像は合成・加工か、警察庁が分析 2邦人殺害警告 :日本経済新聞

 政府関係者や映像編集の専門家からは「太陽光では原則こうした影はできない」などと不自然さを指摘する声が出ていた。

 この「太陽光では原則こうした影はできない」というのは、コメント捏造により生み出されたものである。47newsで検索しても、この「太陽光では原則こうした影はできない」というコメントが載せられたニュースは見つからない。

 

先に述べた3社と日経以外の2社で、この問題コメントを使ったものが存在する。

 

【イスラム国殺害予告】ビデオ映像を科警研で分析 撮影はいつ、どのように? - 産経ニュース

産経のこのニュースは、前出の日経による共同からの配信2記事に、さらにこの記事

イスラム国映像を科警研で分析 撮影はいつ、どのように? - 47NEWS(よんななニュース)

を足して作られたものだと思われる。

 

合成の疑い イスラム国映像を科警研で分析 | 沖縄タイムス+プラス

沖縄タイムスのものも、似たような合わせ技で作られているが、共同通信からの配信であることが明示されている。

 

 

一方、日刊スポーツは「太陽光では原則こうした影はできない」という共同通信による捏造発言を使ってしまったものの、高岡豊氏のコメントを用いて”「合成であろうがなかろうが、日本人2人が捕まっており、殺害予告を受けていることは変わらない」”といった論調で締めた。高岡豊で検索すると、日経と東スポそれぞれの独自記事に、シノドスに書かれたシャルリーの件についての論説が引っかかるのみであった。おそらくこちらのコメントは共同通信から引っ張ってきたのではない、独自取材と推察される。

 

 

今回、こうして見てきてわかったことは、いかに新聞社が共同通信に頼っているかということだけではない。その頼り方にも差があり、単に配信記事をそのまま載せるわけではなく、いくつかの配信をまとめて加工して記事にしているところもあった。また、共同通信が他社に記事を配信しながら、その記事を自分のところでは出していないという事例もあったことになる。

これらを総合して言えるのは、記事についての責任が曖昧になってしまっているということである。自分がある新聞社の記事を読んで腹を立てていたら、それが通信社の配信記事だったというのは当然あることだろうし、さらには複数の配信が混ざって1つの記事が作られていたり、配信記事に独自の取材をプラスして記事にしたりといったことまで行われている。しかも〔共同〕クレジットはつけるもつけないも自由といった体であり、こうやって調べでもしない限り受け手には何もわからない。もちろん朝日読売毎日等の有料記事を今回のように横断して検索するとなると、それに金銭的な問題も加わることになり実質不可能である。

 

タイトルを「報道について考える」などとしてしまった以上、何かしら書かなければならないのだろうが、私個人は今回の件を通じて、少し脱力した。各社のニュースに対し、まともに向き合うのは実はバカらしいことなのではないかとすら思ってしまった。もちろん、あえて問題提起するならば「共同通信が政府(一部権力)の発表に合わせるような捏造配信を行うことで、各社が丸ごとコピーではないにしてもそれを受け記事を発信するため、結果として政府(一部権力)に都合の良い論調が形成されかねない」といったところだろうか。

おそらくマスコミ各社も、通信社から記事を買うことによるリスクをわかっているとは思うので、他社と差の出る部分できちんと「良い報道」(誰かにとって都合良い報道という意味ではない、純然たる質の高い報道)を行うよう努力しているだろう。これからはそういった部分に着目していきたい。