この本は一度読み始めたことがあったのだが、自民党憲法改正草案に対する批判ばかりだと感じて(別に私があの草案に賛成してるとか反対してるとかではなくて、それは自分の読みたい内容ではないと思い)、なんとなく読む気がしなかった。
実際は、この本の目的はそれではない。今そこにある日本国憲法が、戦後(特に最近、この十年程度で)どのような意味をもってきたのかということを、時事ニュースを通して実感してもらうことを狙いとしているように感じた。
構成としては
- 条文
- 条文の意味、他条文との関係についての解説
- 実際の社会情勢や事件とのつながり
- そのままであるべきか、どこを変えるべきかという各所からの見解
といった感じになっている。各所からの見解では、自民党の改憲草案以外にも中曽根試案や民主党の憲法提言によるものが時々示されている(基本的に自民党の草案が中心である)。もちろん、一般的な護憲派や、憲法学者の見方も示されている。決して自民党草案への批判が中心なのではなく、単に「自民党案では~となっています」と併記されているだけのものも多いので、むしろ自民党改憲草案への徹底的な批判が読みたいという人には、肩透かしになると思われる。
1条1条にきちんとページを割いていることが特徴で、9条では自民党改憲草案を全文引用して6ページ割いているが、短いものにも2ページ使っている。例えば55条は一切使われていないしこれからも使われないだろうというものであったり、74条は一見無意味そうだけれど実は重要だよと解説されていたりする。「改憲⇒9条改憲⇒戦争大好き」「9条護憲⇒護憲⇒日本国憲法万歳」のようなつまらない流れに乗らずに、じっくり1条1条を見つめてみたいという人には薦められる。
あとがきでもアピールされている通り、憲法の「今」を伝えているのが本書の良さであり、最近の事件や制度変更についての解説が多い。明らかに憲法を身近に感じてもらうための書き方なので、読むなら早く読んだ方がいいと思う。これはタイトルの「読むための」の部分につながっていて、実際私は読みやすかった。第一歩として良いのではないだろうか。