『一般意志2.0』を利用し切った自民党、捻り潰された貴方と私/『私と彼女のお泊まり映画』を読んで、共感の時代について考える

 

一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル

一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル

 

 

 

 

GoogleのサジェストやTwitterのトレンドをヒントに、そういった無意識の形を取って現れるものを集積してオープンにすることで、専門家による密室(熟議が成立する一方、極めて閉鎖的な空間)での決定から、より良い民主主義が行えるようになるのではないか、という話。かなりいいかげんな要約だが、筆者もこの本は論文ではなくエッセイだと言い切っているので問題ないだろう。

 

最近の自民党公明党政権による政治的な横暴を見ていると、一般意志2.0を利用したのが自民党だなということを痛感する。安倍政権は各個の政策では反対5割〜6割あるのにもかかわらず、逆に政権支持率は6割あり選挙でも大勝を続けている(都知事選は違うじゃないかと言う人もいるかもしれないが、小池百合子自民党の人間ということを考えれば明白で、あれも自公政権の勝利である)。ではそれはなぜか。

我々は個々の政策について、それなりに反対を示せる。しかし、その反対の本気度がどうなのかという点についてはまた別なのだ。我々が安倍政権の掲げる様々な個別政策に反対していたとしても、その反対が本気でないのなら、強行採決されても実は何の問題もない。あとは適当に「決める政治」とでもアピールしておけば、「決められない政治」よりは良いんじゃないか、と誤魔化せるということなのだ。これに気づいたのが自民党で、例えば沖縄での基地建設、ヘリパッド建設、これらについて、沖縄県では猛烈な反対運動が行われている。国民世論を調査しても、慎重論が過半数を占める。それでも自民党が強行できる理由は、一般意志2.0にあるのだ。

我々は「沖縄に基地を集めるのはおかしい」という極めて常識的な意見を口にする一方で、無意識レベルでは「沖縄は税金泥棒だろ」「県住民ではなくチョンやシナ人が集まって抗議してるだけ」「サヨクがうるさいなあ」「あんなサヨク島は中国にくれてやったらいい」「沖縄人は土人、あんなの日本人じゃないから」こう思っているのだ。

今までは電話調査や現地での抗議だけを真に受けていたので、安易に沖縄に基地を作っていたらまずい、減らさなければならないという意識を自民党の人達も持っていたんだと思う。しかし、インターネットを通して我々の一般意志2.0を探った結果、沖縄県を痛めつけても「本土」の人々は気にしない、むしろ沖縄ざまあと喝采を送っている、そういうことがバレてしまった。事実、選挙でも自民党沖縄県議席を失う一方、他県では大勝し、「沖縄はしばけるだけしばいたほうが良い」という「本土」の民意を示した。今まではマスコミ等のフィルターを通して隠していた、我々の本当の民意が一般意志2.0、つまり無意識の集積によって曝け出されてしまったのだ。

 

これが安倍政権高支持率の背景だ。我々がどれだけレイシストで、どれだけ他人の痛みに無関心で、どれだけ偏見の塊であるか、自民党は把握してしまった。今の状況を変えるためには、根本的に我々国民が良い市民に変わるしかない。そうならなかった場合、自民党が勝ち続け、日本国民は死にゆく運命にあるだろう。しかしそれは、死んで当然の愚かな国民だった、ということなのかもしれない。

 

もちろん、本書は別に自民党のやっていることを正当化しているのではなく、本書の掲げる一般意志2.0では、集積されたデータはオープンにされるべきだと書いている。今は自民党が一般意志2.0をこっそり収集し、政策や報道に利用しているわけだが、本書の言う一般意志2.0ではそうではなく誰もが見られるようにデータが提示される。つまり我々が沖縄への差別感情を直視し、内省する機会が与えられるのだ。そういった仕組みなら良かったのだが。

 

 

以下は全く別の話。

 

 

 

私と彼女のお泊まり映画 1巻 (バンチコミックス)

私と彼女のお泊まり映画 1巻 (バンチコミックス)

 

 

映画を見て感想を述べ合うという行為は最高に面白い。それを百合と組み合わせた、極めて安直な、良いと思わないわけがない漫画が『私と彼女のお泊まり映画』だ。ただし、この作品では映画のネタバレをしない。僕も第1巻で見たことのある映画は『インサイド・ヘッド』だけだったし(それはそれで映画を見なさ過ぎなのでは?)、そういった層向けにかなり薄く作っている。一応、映画のレビュー欄だけはそれなりに作ってあるので、取り上げられる映画が好きな人でも失望はしない程度になってはいる。

テレビのワイプ芸人を例に出せばわかる通り、我々は面白いこと以上に、面白がっている人を欲しがっている。それが、そもそも自分一人では何を面白いと思っているのか判断できないのでは?と揶揄されたりもするのだが……我々は弱い動物なのだ。

ネタバレがないだけではなく、取り上げる映画も普通だし、あまり深いところに突っ込まないので(恐らくではあるが、作者が特別に好きな映画というものがあっても、あえてこの作品では使わないようにしているんじゃないかと思う。そういう漫画)、新しい映画を発見するという意味ではあまり役に立たない。ただまあ、こういう適当な百合漫画を読んでニヤニヤしてしまうような弱い人間なんですよ、我々は。私も女の子になって女の子と一緒に映画見たいです。そんな感じ。