『メアリと魔女の花』は濃厚な◯◯◯映画だった。

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メアリと魔女の花』は濃厚なジブリ映画です。

 

人によって「ジブリっぽい」に感じるものは違うと思いますが、この映画の予告や宣伝を見て「ジブリっぽい」と思って見に行ったなら、間違いなくジブリを体感できると思います。これは別に制作陣がジブリのパクリをやっているわけではなく、監督・脚本を務める米林宏昌ジブリのアニメーターとして長年やっていた人間だから、自然とそうなるのでしょう。つまり、どちらかというと人々の考える「ジブリっぽさ」の何割かが「米林宏昌っぽさ」で、それを感じているというのが正しいということです。

 

個人的な好みとしては監督の前作『思い出のマーニー』のほうが好きなのですが、『マーニー』は僕の中で映画最高クラスに好きな作品なので、それとの比較よりは、今作がとてもいい作品だったということを言いたいです。偶然見つけた花からとんでもないことが起きてしまい、不思議な世界に引き込まれ、ハラハラドキドキさせられます。メアリが涙を見せるあのシーンがいいですね。ぐっときます。その後も最後まで興奮させられっぱなしの映画で、とても楽しかったです。皆さん、ぜひ見ましょう。見た目だけではなく中身もちゃんとジブリっぽい映画なので、ジブリが好きなら見ましょう。ありがとうございました。

 

 

 

以下は未見の方は絶対に見ないでください。重大なネタバレを含んでいます。

 

 

 

 

 

 

 

メアリと魔女の花』は濃厚な反原発映画です。

東日本大震災を報道を通じて経験している人なら10人に10人がわかるくらいはっきりとした反原発映画です。ぼーっと見ていた人も「想定の範囲内」というセリフではっとさせられるはずです。あの時、命を大事にしなければならないと固く誓ったのは何だったんだと。忘れていたことを思い出させてくれる作品です。

子どもに対しては生命尊重の大切さに加えて、赤毛のサルを通じて、あなたの抱えている「人とは違うところ」を肯定しています。また、作品内でメアリは明らかに悪いことをしているのですが、それによってピーターが危険な目に遭ってしまいます。なんとか救い出そうと向かい、ようやくメアリがピーターに会うシーンで、メアリは涙を流して謝ります。人が人を想う心を描いた作品でもあります。反原発だけではなく、非常にメッセージ性の強い、これからの時代に(大変残念なことに)必要な映画です。もちろん、そういう意味で大変ジブリらしい映画だと思います。シンプルで、今更何言ってんだと思う人もいるかもしれないけれど、少なくとも『ナウシカ』以来そのシンプルなメッセージは必要なものであり続けているのですから。『メアリと魔女の花』は濃厚なジブリ映画です。

パンフレットでバンクス役を務めた女優の渡辺えりさんが解説を寄せているのですが、かなりこの政治性を読み取った解説で(渡辺えりに書かせているのだから当然です)、少々書き過ぎじゃないかというくらいに作品の持つ政治的なメッセージを書いています。全肯定はしませんが、この人らしい角度で捉えた良い作品評だと思います。

最後に、この映画における見た目の上でジブリ作品っぽい部分を列挙して終わりたいと思います。

 

魔女の国の外観、ドクターの部下:千と千尋の神隠し

マダムの出す黒い攻撃部隊:ハウルの動く城

メアリが猫を追いかけて夜間飛行を見つけるシーン:となりのトトロ

ティブとギブ、フラナガン耳をすませば

積乱雲:天空の城ラピュタ

動物たちの反乱:もののけ姫

シャーロットおばさま:借りぐらしのアリエッティ

箒に乗った魔女、ポスターのコピー:魔女の宅急便

 

これらの要素を理由に、外見だけジブリ映画だという認識を示す人もいるでしょうが、私は先に述べたように内面も文句なしのジブリ映画だと思っています。