スラムダンクを1ミリも知らない人が『THE FIRST SLAM DUNK』を見てきた感想

1ミリも知らないというのは嘘で、「安西先生……バスケがしたいです」「諦めたらそこで試合終了ですよ」というセリフがあるのと、あと桜木花道とゴリという登場人物がいるバスケットボールの話だということは知っている。それ以外については全く知らない。以下感想。

本編はバスケ1試合を通して描きながら、宮城リョータという人物の視点を中心に、それ以外の登場人物の背景についても描いていく映画となっている。バスケットボールの作画はCGを用いているのだが、これがとてつもなく出来がいい。我々の「常識」だと補助ではない剥き出しのCG作画というのは普通の作画の節約のためのものという認識なのだが、この映画のCGはそんな領域ではなくスポーツシーンを描くために必要十分なものが使われている。バスケの試合自体は極めて真っ当な描かれ方をしているのだが、途中明らかに変な奴が変なことをして「次やったら退場ですよ」と審判に言われていたり(一発退場にしない審判甘過ぎだろと笑った)マンガ的な場面もあることはある。試合展開、結果は創作物としてオーソドックスながら、まあ単純にスポーツとしてバスケが面白く、その面白いバスケの試合をそのまま描いているため面白い。宮城リョータという人物の視点を中心に据えた人間ドラマもまあベタなものであり(誕生日が同じはやり過ぎだろと心の中でツッコんでいたが)、特別問題があるものではない。そしてありがたいことに(兄貴が亡くなったー母親を支えるーみたいな類の)人間ドラマにはあまり興味が持てないのだが映画の中心はバスケの試合なので、人間ドラマだるいなあと思わずに見ることができた。恐らく、原作では赤チームそれぞれの登場人物のバックグラウンドストーリーが要所で語られていて、その中で今回は宮城リョータを中心に再構成したということなのだろう。その造りは成功していると思う。

総評すると、この映画は構成としては『咲-saki-』のアニメみたいな感じだなと思った。あのアニメは局の最中に百合百合しいエピソードを潤沢に盛り込んで百合厨が涎を垂れ流す構造になっているのだが、本作ではそのドラマ部分がバスケに入れ込む男ヤンキーのものになっているのだから。私はヤンキーが嫌いだしバスケも全然好きではないのだが、本作がよく出来たアニメであることだけは十分に理解できた。バスケシーンの描かれ方がバスケに興味のない私でも満足できるものだったし、登場人物の物語も(個人的な興味が薄いとはいえ)納得できるものになっていた。個人的に響くところはまるでないのだが、文句のつけようのないアニメーションだと思う。あまりない類の感想だが他に言い様がないので仕方ない。

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